長野市
株式会社 松澤工務店
株式会社 松澤工務店 (長野市)
長野市 / F邸
築150年の土蔵を再生し、茶室のある離れへと生まれ変わったF邸。かつての敷地内には、住居である母屋と離れ、そして土蔵の3棟が並んでいたという。改修を思い立ったとき、母屋と離れは老朽化により解体するしかない状態。残る土蔵はギリギリ再生可能だと教えてもらい、「せめてこれは残したい」というFさんの思いから、再生計画がスタートした。
土台にはズレがあり、地盤改良も必要だったため、「曳家」によって一旦建物を動かすことに。「曳家」とは建物をそのまま移動させる手法。基礎と建物を切り離して建物部分をジャッキアップし、レールに乗せて移動させる。そんな難工事を担当したのは、長野市にある松澤工務店。同社の金井さんは、「伝統的かつ高度な技術ゆえに、現在曳家ができる業者はごく少数。今回は須坂にある金田工業所さんにお願いしました。曳家以外でも、大がかりで難易度の高い改修工事でしたね」と振り返る。
「壊してしまっては先祖に顔向けできないという思いを汲み取ってくださり、最大限の努力をしていただいて心から感謝しています」と話すFさんと、壊すのは簡単だけど、残せる道があるなら未来へつなげたい」と話す金井さん。そんな両者の思いと職人の技術が重なり合い、歴史ある土蔵に新たなシーンが刻まれていく。(ナガノの家リフォームリノベーションvol.8掲載)
茶道を習っているFさんは、「いつか自分の茶室が持てたら」と夢を描いていたそう。新しいF邸の1階には茶道用の和室ふた部屋を設置。「お茶の先生にご指導いただきながら、本格的な空間を目指しました」