軽井沢町 ／ 土屋邸 ／ ※取材邸は離れとして活用、住居は別棟

【土屋邸】使われていなかった蔵から趣味を探求できる大人の隠れ家へ

　長年使われていなかった蔵の再生を土屋さんご夫妻が決意したのは、2022年1月のこと。建築に造詣が深く、住友林業ホームテックの古民家再生プロジェクトを熟知していたご主人。同社に依頼を決め、計画が始まった。
「大人の隠れ家」をテーマにした室内は、ギターや書籍、交流など、ご主人の人生を彩るすべてを内包した空間。交友関係が広いご主人の希望で、パーティー用のバーカウンターも設置。耳付きタモ板のカウンターや室内ドアに嵌め込まれたドイツ製ガラスなど、吟味された一つひとつの素材が上質な雰囲気を醸す。
施工側が苦労したのは、暮らすための法的要件を満たすこと。採光窓や換気を導入しつつ、伝統的な海野格子を取り付けるなど、蔵らしい意匠も熟慮されている。空間をモダンに見せるアイアン階段は、漆喰壁の内側に50本ものヒノキ材を埋め込んで実現したもの。伝統とモダンの美の共演が見事だ。
「歴史が刻まれたこの蔵をなんとしても残したくて。息子や孫にも居場所のひとつとして使ってもらえたら」とご主人。過去に敬意を払いつつ、次世代へつながる豊かな空間が完成した。（ナガノの家 リフォームリノベーションvol.7掲載）