麻績村 ／ M邸 ／ 夫、妻

部屋が多すぎる暗くて寒い古民家から柱や梁、建具を活かした明るく暖かい家へ

善光寺街道に面したかつての宿場町には、日本家屋が点在し、どこか懐かしく温かい雰囲気に包まれている。宿場の一角に建つM邸は、明治時代の中頃まで旅籠として機能していた歴史を持つ、築１３０年の古民家をリノベーションした。柱や梁に加え、板戸や障子など既存の建具をふんだんに活用。梁あらわしの吹き抜けが開放的で明るい印象のLDKをはじめ、美しい木組みを見せるデザインは、伝統工法の技術によって叶えられた。耐震性に優れるのはもちろん、壁や床に断熱材を取り入れたうえ、1階には床暖房も備え、暖かく快適な空間へと生まれ変わった。
　旅籠を営んでいた時分には客室として使用されていた座敷2部屋は、当時の趣きが色濃く残っている。座敷の欄間（らんま）も元々この家にあったものだ。施された彫り物を見ながら「こんなに素晴らしいものを無くすことはできないなと思っていたんです。あるものを大切にしながら、過ごしやすい環境が整って嬉しい」と満足げなおふたり。改修後、地元の方から「残してくれてありがとう」と声をかけられたといい「地域の宝を残すことができて良かった」と笑顔だった。（ナガノの家リフォームリノベーションVol.8掲載）