長野市
中澤勝一建築株式会社
中澤勝一建築株式会社 (長野市)
千曲市 / A邸 / 本人、長女
「自分が家を持つなんて、考えたこともなかったんです」とAさん。シングルマザーとして子育てを終える頃、古くからの知り合いの中澤勝一建築・中澤社長と、「家とは何か、どういう思いでつくるものか」という内容を話す機会があった。建てる予定はなかったものの、親の介護に直面し、自身の将来に思いを巡らす中で、「健康で快適な暮らしの基盤=家を持つことも、人生の選択のひとつでは」という思いが芽生えたという。
とはいえ、土地もないしお金も不安。本当に建てられるのかと悶々としていたところ、「自分に合う現実的な線から考えていったら?」と中澤社長のアドバイスを受け、思い切ってお財布事情をさらけ出し綿密な資金計画を立ててもらった。ようやく道筋が見えたものの、それでも不安や怖さが勝ってなかなか一歩が踏み出せず、半年が経過。「決断しなければ迷っているだけで人生の時間が過ぎていく」と覚悟を決め、母を看ながら仕事を続け、自らの家を持つ決心をした。
予算に合う・通院の送迎に便利・駅に近い…などの条件で土地を探し、縁あってこの場所に出会った。それまで資金や土地で頭がいっぱいで、どんな家が欲しいかまで考えが及ばなかったというAさんだが、「ここなら平屋も建てられる」という社長の話を聞き、「子育てを終えた今、大事なのは家事がラクで生活しやすくて隅々まで手が行き届くこと。予算内で収まるなら、自分には平屋がちょうどいい」と考えた。長女の後押しもあり、平屋での家づくりを決めた。
「自分にできる範囲で」と臨んだ家づくりは、大事なこと・必要なものの見極めから始まった。「要らないものにお金はかけられないし、欲しくもない。ずっと素敵に暮らし続けるため、手に余るものは排除したかったんです」とAさん。その分、暮らしやすさと性能、長く愛着の持てるデザインには徹底してこだわった。夜勤もある長女とは生活リズムが異なるため、ゾーニングには特に配慮。上下階での切り替えができないため、動線や部屋の配置で工夫してもらった。
健康に歳を重ねていきたいとの思いから、性能にもこだわりが。「アパートでは、夏はエアコン23℃設定、冬は灯油ヒーターをガンガンたいても『暑い・寒い』が悩み。でもこの家では、夏28℃、冬22℃設定のエアコン1台でちょうどいい。真夏・真冬はエアコンを1日中付けっぱなしにしていますが、驚くほど光熱費が安いんです」。
新居が完成して一年。シンプルなデザインの家で快適に暮らしている。今実感するのは、「あの時決断して良かった」ということ。庭先で花の手入れをしていると、印象的な外観に通りがかる人から声をかけられることもしばしばだ。近所の人からは、「この家を見て、建てることを決めた」という声も。思いを込めてつくった家を他の人も見ているのだと思うと、前にも増して「大切に、素敵に暮らしたい」という思いが強まったという。「自分にちょうどいい」平屋は、これからもAさんに寄り添い、人生を豊かにしてくれるに違いない。
(ナガノの家 Vol.14 2020年秋・冬号掲載/ナガノの家 PREMIUM 2022掲載)
長野市
中澤勝一建築株式会社