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松本市 / N邸 / 夫、妻、長男、長女
松本市郊外の高台。幹線道路から奥まったそこは、ほどよく田畑に囲まれ、民家が点在する静かな環境。遮るものがなく西に開けた敷地に立つと、昼は北アルプスの山並みを望め、日が沈めば市南部の夜景が眼下に輝く。市街地からほんの少し移動しただけなのに、意外なほど眺めがいいことに驚いた。「周りに何もない…それがよかった ! 自然に囲まれて、アルプスが見える、こんな松本らしい土地に家を建てたかったんです」とNさんは眺めに目を細めながら語る。
家づくりのパートナーは、性能をきちんと考えている会社、木をたっぷり使った家を建てる会社に絞って探した。そして知ったのが、北海道基準を超す断熱性能などをホームページでうたっているルティロワ。「設計事務所と工務店が一体化しているというのもポイント。設計と現場の意思疎通がスムーズなはずだと考えました」とご主人。実際に設計担当の丸山恭弘社長に相談したところ、「熱が入ってくると、キッチリ理論的かつ丁寧に説明をしてくださる。私自身そういう説明でないと納得しない方なので、すごく信頼感が持てました。『この人ならまかせられる』と、依頼を決めたんです」。
対する丸山さん、「Nさんの話を聞き進めて、『これは普通とは違うな』と(笑)。いい意味で自分の想像を超える住まいになりました」。当初から、「眺めを楽しめるように」という希望はあったものの、さらに課されたのは“自給自足できる家”という要望。災害時でも家族を守れる最高ランクの耐震性能をはじめ、ライフラインの寸断に備えて太陽光発電システムと井戸水の水源を要望。そして真冬も快適に過ごせる断熱性能、広い敷地を生かしたテニスコートや多用途の外物置、奥さまの使いやすさを考えたキッチン、ウッドデッキや薪ストーブ、2階の浴室など、ご夫妻のこだわりは多岐に渡り、分厚い要望書として提出された。「ご主人は妥協を許さない、悩み抜いて結論を出す方なので、本当に細かい部分まで一つひとつ確認を取りながら進め、図面の変更もミリ単位。ご夫妻ともに一番こだわられていた性能面については、設計も構造計算も私自身が行うことに安心感を持っていただけたと思います。逆に、当社ならこの要望に応えられる、当社じゃなきゃここまでできないだろうという自負はありました」。
ただ要望を叶えるだけではない。コストとのバランスを鑑みてプレゼンを繰り返し、これでもかというほどアイデアを出し合った丸山さんとNさん。「ル・ティロワ=引き出しという社名の通り、アイデアが詰まった引き出しをすべて開け尽くしたんじゃないか」と丸山さんは笑う。Nさんがなかなか決められない部分も、さまざまな角度からアドバイスし、ベストにたどり着くための努力は惜しまなかった。
その甲斐あって、「これ以上ない」とご夫妻が太鼓判を押す住まいが完成。「楽しい家づくりでしたよ」と振り返るご主人は多忙な毎日を過ごすが、「ここまでこだわって建てたからには、できるだけ家で過ごしたい。広いデッキでバーベキューしたり薪ストーブでピザを焼いたり、家族と一緒に楽しむ時間が格段に増えそう」と期待を膨らませる。部屋の中では飽き足らず、デッキやバルコニーへくるくると駆け回る子どもたちの姿が、家族の新たな楽しい暮らしを雄弁に語っていた。
(ナガノの家 2019年 春・夏号 vol.11掲載掲載)