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千曲市 / T邸 / 夫、妻、長女(取材時)
年月が育てた古民家の魅力に魅せられて
山あいに建つ、築百三十年の古民家。大きな屋根が目をひく家は、存在感を放ちつつものどかな風景に溶け込み、まるでそこだけタイムスリップしたかのよう。「できるだけ往年の姿のままにしたかったんです」と話すのは、この家の主人・玉置さんだ。古いものに宿る独特な魅力に惹かれて古民家に住みたいと考え、あちこち探し続けてようやくこの家に辿り着いた。「屋根も土台もしっかりしていて、ここなら風情を活かしたリノベが叶うと思いました」。
再生にあたって大事にしたのは、古民家らしいつくりや素材感を尊重すること。新たに使う素材は土・石・木にこだわり、現代風に改修されていた部分は元に戻して本来の姿に近づくように手を加えた。「素材も技術も経てきた時間も、新築では手に入らない尊いものばかり。それをそのまま受け止めたくて」と玉置さん。一方で、安心して子育てできる環境にも配慮。例えば間取りは、玄関を道路側に移して動線を改め、玄関→火の間と続く土間空間に続けて家族が集まるキッチンをレイアウトした。断熱性能も全面的に強化し、パッシブ暖房を採用。「冬も快適に過ごせます」と奥さまも笑顔だ。
この家に暮らして2年。今と古が行き交う住まいは、すっかり家族の日常の場となった。「もうすぐ下の子が生まれるんですよ」と話す笑顔に、受け継いだ住まいが未来へとつながっていく道筋がしっかりと見えた。
(ナガノの家リフォームリノベーション Vol.7掲載)