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上田市 / H邸 / 夫、妻、長男、長女
池の周りにツツジが咲き乱れる広い庭、家の裏手には山の緑が間近に迫る。そんな緑豊かな住まいで生まれ育ったYさんが新居を建てたいと選んだ土地は、実家の敷地内。両親が暮らす母屋の西側にあった建物と物置を撤去し、約25坪の土地に新築を計画したが、「あまり広くないので不安でした」と振り返る。ハウスメーカーの展示場を回って契約を決めかけていた矢先、友人の紹介で出会ったのが菱田工務店の菱田社長だ。「これまで手がけた住まいを見てピンときました。社長の住まいに対する情熱にも惹かれて」と依頼を決めた。
限られた空間を開放的に使うために導き出した答えが、ダイナミックな吹き抜けのリビングだ。約8mの間口を最大限に生かして南側に天井までの大開口を設け、室内外を一体に感じさせることで広がりを体感できる設計に。対面側となるオープンな中2階の北側には、山の緑を切り取るFIX窓をデザイン。南北に視線が抜ける空間は面積以上に伸びやかで明るく、フレームのように窓が切り取る豊かな緑が、一枚の絵画のようにインテリアを彩ってくれる。
部屋を広く確保するため廊下は減らし、玄関から直行できるウォークスルークローゼットやダイニング脇のワークスペースなど、限られた面積の中で子育てに便利な間取りを実現。玄関に設けた家族用の裏動線上のドアを開ければ母屋と行き来できる設計で、「子どもたちがすぐ遊びに行けるし、雨の日や夜も安心」とおふたり。さらに「予想外で嬉しかった」という小屋裏収納や空間に合わせた造作家具など、収納にも工夫を凝らしている。
室内は「落ち着いた雰囲気の木の住まい」という希望から、白い壁をベースにヒノキの柱・梁と建具をダークに塗装して、木の個性を活かした。外観も木を活かして洋のイメージに寄りすぎないよう配慮し、和の佇まいを持つ既存の母屋と調和させている。新旧の住まいが共存し、新しい家族の物語を紡いでいくことだろう。
(ナガノの家 2016年秋・冬号 vol.6掲載)