松本市
有限会社かわかみ建築設計室
有限会社かわかみ建築設計室 (松本市)
茅野市 / C邸 / 夫、妻、妻の母
明治27年に建てられ、昭和62年に主を失うまで家族を支え続けた家。それから30年間、変わっていく集落を横目に、ただひっそりとこの地に佇んでいた。そんな古民家に再び命を吹き込んだのがコーネル夫妻だ。
山好きのご主人はかつて伊那の高台に立ち、谷を見下ろして涙したことが。その姿を見て、自然と寄り添う暮らしを実現しようと決めた奥さま。「東京で暮らすご夫妻がなぜ信州に?」との質問に、「ふたりとも信州が大好きだから」と満面の笑み。古民家以外の中古住宅も考えたが、古民家を見るたびに気持ちが傾き、最終的に門を叩いたのは古民家に力を入れている不動産会社だった。
当初は冬の寒さを考え伊那で物件探しを始めたが、徐々に諏訪・茅野地域も視野に。それが運命の出会いをもたらす。「初めて来た時は荒れ放題で、住める状態じゃなかった。でも家が醸し出す、言葉で表わせない強烈な魅力を感じて」と、悩んだ末に購入を決めた。
「古民家は再生できる建築士との出逢いが必須」と不動産会社から紹介されたのが川上さん。「数人紹介していただきましたが、信州の気候や風土を熟知し、それらを踏まえた家づくりを最も重視していると感じました」とご主人。いくつもの運命が重なり合い、この地の自然や風土に溶け込むような、この家が刻んできた歴史をも感じさせるような再生が始まった。いくつもの運命が重なり合い、この地の自然や風土に溶け込むような、この家が刻んできた歴史をも感じさせるような再生が始まった。
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ひと口に「古民家再生」といっても、どこまで再生させるかはさまざま。造りや材料の傷み具合など、建物自体の制限もあるが、最も重要なのは住まい手の判断。現状の生活や入居後の希望を踏まえ、どこまで再生できるかを判断する必要がある。
コーネル邸では、「できる限り以前のままに」という希望が。玄関で存在感を放つ大戸をはじめ、建具はすべて昔の物を再利用。上部を縦横に渡る梁や歴史を経て味わいの増した柱などもほとんどが昔のままだ。土蔵の壁も表面を削って上塗りこそしているが、中はそのまま。ご夫妻は「梁や柱は洗わず、そのまま使って欲しい」と希望したが、「汚れや煤が落ちるから」と諭されたとか。それほどまでに往時を再現したかったご夫妻だが、同居するお母さまや将来のことを考え、寒さ対策は万全に。断熱材の施工はもちろん、お母さまの生活空間には床暖房を入れ、厳寒地でも安心な環境を整えた。できる限り昔の姿を再現しつつ、今後の暮らしやすさも考えた、現代の生活に寄り添う古民家が誕生した。
(ナガノの家リフォームリノベーション Vol.3掲載)
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